「握り手」
少年は少年なりに恋の悩みってものがある。
その悩みが自分にとってどんだけ楽なもんだったらいいんだろう。
人から見た自分の悩みなんって本当はくだらないものってことも十分自分では承知しているはずだ。
恋する少年はつねに悩みがおつきだ。
「なあ、東方・・・どうやったら亜久津と手がつなげるんだろうな」
東方は(手っ!?)とでも言いたそうな顔だ。
「いや、そんなこと聞かれてもな。俺じゃわからないよ」
痛さだけじゃなくって優しさもちゃんと亜久津からは貰ってるけどそれを、態度で返してあげたい。
でも。いざ、手をつなぎましょうとなると別だ。
まず、亜久津はポケットの中に手を突っ込んでるかタバコを吸ってるか。
どうやったら・・・?
「千石ならどうする?」
こういうことはめったに千石には相談しないようにしてるけどスキンシップは千石の十八番っぽいしな。
千石に聞けば何がヒントが・・・・。
「俺?俺ならさりげなく」
東方の眉間にしわがよった。
きっと(千石がさりげなく・・・・?)とか考えてるんだろう。
だって、俺もそう思ったから。
やっぱり、こいつに聞いたのが間違いだった。
「でもさ、南なんでそんなにあっくんと手がつなぎたいの?まあ、あのあっくんだからあっちから手を握ってくることはなさそうだよね。絶対に!」
俺が一番言われたくないことをすらすらといいやがって・・・・・。
「南・・・・。部活終わったのか。なら帰んぞ」
こうやって部活の終わり間際に部室に迎えに来てくれるのは亜久津の習慣みたいになっていた。
「あっ、うん」
こんな調子じゃため息が出てくるよ。
「南!!がんばってね」
せ、千石。
そんな、亜久津の前で応援されてもな。
「あ、ああ」
そして、そんなに円満の笑顔を返してくれるな。
「あ?何を頑張るんだ」
「あのねー南はねーあっくんと・・・・・」
「あーーーーー!!!!・・・・そうだ俺これから夕飯の買い物しに行かなきゃ行けないんだ。亜久津一緒に行こう」
千石・・・お願いだからそれ以上は口を開かないでくれ。
こっちの身が持たない。
ひとの気も知らないで。
「お前、なに赤くなってんの」
もう、なんでもないからそれ以上つっこまないでくれー。
ボロ出しそうだから。
「いこっか」
なんで俺ってこんなことで焦ってんだろう。
「今日、寒いなー。もう、冬が近づいてきたって感じ。俺、冷え性だから冬とか手がすっげ冷たくなるんだよ」
「・・・・」
「去年亜久津にはマフラー作ったから今年は手袋にしてみようと思うんだ。だから今度手のサイズ測らせてな」
「ああ」
しっかし、本当寒いな。
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