最近どうも海堂の機嫌が良くないような気がする。
いつごろからだろう・・・・・・・不意に握った海堂の手に振り払われたのは。
「海堂」
俺はゆっくりと君が振り返るのを待った。
「なんっすか」
いつもよりドスの聞いた声で俺の声に反応する君の声。
「実は新しいメニュー作ってみたんだけど」
無意識の間に海堂の新しいメニューを作ってやるのはどうやら、俺の一つの癖になってしまったらしい。
大体いつも俺が作るのは海堂の限界よりは少し下にしてある。
海堂がそれ以上のメニューをする事をすでに計算しているから。
それに、できるなら海堂にはまだそんなに筋肉をつけて欲しくなかった。
発育と中の体に無理やり筋肉をつけようとすると成長過程がおかしくなってしまう。
また、海堂のあの足はいつも俺の目をひきつける不思議な力を持っていた。
こんな理由で、海堂にはなるべく筋肉をつけて欲しくなかった。
「ありがとうございます。じゃあ」
海堂は新しいメニューの表を受け取るとすぐに立ち去ろうとした。
だが、俺は海堂の腕を掴み引き止めた。
「なんっすか?」
「い、いや、なんでもないんだ」
ただ、俺はそれ以上の言葉が欲しかったんだ。
掴んでいた腕がすっと抜けた。
「それじゃあ」
なぜ、俺と目をあわさない。
「ああ、呼び止めて悪かった」
俺は、なんってわがままなやつなんだろう。
夢に海堂が出てきた。
別に、夢に出てくる事は珍しくないけど、今日の海堂は何も話してくれなかった。
どんなに、声をかけても聞こえていないのだろうか返事をしてくれない。
いったい、何がいけないんだろう?
海堂に会うために今日も学校へ行く。
「おはよう、海堂」
「おはようございます」
丁寧に返事をする君の目はやっぱり俺の目を見てはいなかった。
「なあ、海堂・・・・・」
「はい?」
「いや、やっぱりいい」
どうしても気になるけど、その答えは聞きたくなかった。
最近先輩の様子がおかしい。
特に、先輩の幼馴染って言う人が現れてから。
なんていうか、モヤモヤした気持ちが俺の中に出てきてまともに先輩の顔が見れない。
もっと、先輩を独占したい。
この、あふれ出す気持ちはどうやって押さえればいいんだ。
「先輩、久しぶりに試合しませんか?」
「いいよ」
もちろん勝ったのは乾先輩だった。
「先輩、俺、気になる事があるんっす」
「ん?」
“幼馴染の人とどういう関係なんっすか?”
この、海堂の言葉がずっと残った。
どういう関係って、幼馴染でよきライバル・・・・・?じゃないのかな。
俺は、そう思う。
海堂はいったいどういう風に見ていたんだろう。
先輩は、あのまま固まってしまったけどいったいどんな関係なんだろう。
俺は、誰の言葉を信じればいいんだ。
「もちろんただの幼馴染でよきライバルだよ」
この、先輩の言葉を信じてもいいのか?
でも、この言葉以外はもう何も信じられないような気がして。
すこしずつもやが晴れて行った。
次に、先輩と話すときはきちんと顔が見れる。
そんな気がした。
海堂が、やっと、目を見てくれるようになった。
機嫌が良くなったみたいだ。
今度は、掴んだ手を振り払われないような気がした。
yoshiyuki