「痛いキズ」





見るに堪えない。
痛くないのだろうか・・・・。
見てるだけで自分も痛くなりそうな、亜久津の怪我。
自然と涙がこぼれる。
無力な自分が悲しくなった。









「もう、これ以上傷を増やさないでくれ」










真っ赤な血は、消毒液と混じってなんともいえない様子をしている。
亜久津の傷から目をそらす。
亜久津はただ、タバコを吸って俺の頭に手を乗せるだけだった。
一つずつ傷を処理していく。










まるで、俺と亜久津の間にある谷間を埋めていくみたいに。









色白い亜久津の肌を指先でつーっとたどる。
暖かくなるお互いの温度。
亜久津の傷口はますます熱をもつ。
「傷、触ってもいい?」
亜久津は何も言わない。
恐る恐る、傷口をなぞってみる。













一瞬亜久津の顔が強ばった。









「悪い・・・」
それでも亜久津は何も言わずに出たままの俺の涙を拭き取った。
すると、亜久津は急に立ち上がった。
「どっか行くぞ」
俺の腕を引っ張る。
引っ張られた腕をそのままに、俺は亜久津を見上げた。
「どっかってどこ」
亜久津の傷に目が行き冷めた言葉が出てくる。
「単車で行けるとこ」
言われるがまま、外へ出た。









誰もいなくなった部屋は、亜久津を知らなかった頃の俺みたいに硬く扉を閉じた。











yoshiyuki