「思い出して欲しいだけ」
「亜久津って誰?」
交通事故にあって、意識不明になってた南が初めて目を覚ましたときに言った言葉だ。
「南!?」
目が覚めた南をみて周りが喜び驚いていた。
ただ一人をのぞいては。
3日前南は部活の買い出しをしに行くと一人でコンビニへ行った。
その帰り道居眠り運転をしていた車が南に突っ込んできた。
もはや、避けることもできず・・・・・・。
そして、今にいたる。
目が覚めた南は一人だけ思い出せない人物がいた。
それは、亜久津。医者の話だと、強烈に印象があったため、記憶が飛んでしまったらしい。
記憶が戻るかどうかは南しだい。
「南本当にあっくんのこと覚えていないの?」
オレンジ頭の千石が今日もお見舞いにきた。
ダブルスの相方、東方は部長の南の代わりをするため部活から抜け出すことができず今日はこなかった。
「うん。思い出そうとすると、こう頭がずきずきって・・・・」
南は目が覚めたとき知らない顔が一人いたことに気付いた。
そして、それが亜久津っと言う名の人だと知ったのは千石に聞いてからだ。
顔がわからない。
どういう関係だったかわからない。
でも、名前だけは知っていた。
自分に関係することなにのわからないことがあるってイライラする。
南は亜久津のことを思い出したくって、必死になった。
亜久津は南が目覚めた日以来こなくなった。
「亜久津・・・って人・・・・」
ぼそっと南がつぶやいた。
「ん?」
うまく聞き取れなかった千石が聞き返した。
「亜久津って人何でこないわけ?」
「何でだろうねーあっくんってよくわからない人だから」
オレンジ色の頭に陽の光があって金色に見えた。
「ふーん・・・・」
南は頭を枕に埋めた。
「南ー。俺今日はもう帰るね」
外はすっかり暗くなっていた。
「あ、おう。ありがとうな」
病室に一人残された南。
再び亜久津について考えてみた。
1時間たっただろうか、南は浅い眠りに入っていた。
「・・・・・・」
ふっと、部屋に南以外の人物がいた。
南はそれに気付かず寝続ける。
入ってきた人はベッドの横のパイプ椅子に座った。
はぐれている毛布をかけなおす。
「・・・だ・・・れ・・・・・?」
南がそれに気付いて目を覚ました。
「・・・・・」
相手は何も言わない。
「亜久津・・・って人?」
ぼやけている目をこする。
はっきりと物が見えるようになる。
やっぱりきていたのは亜久津だった。
しばらく見つめ合う。
亜久津が南に近づく。
「えっ?」
亜久津はふいをつくと南にキスをした。
激しく抵抗する南。
舌の侵入を防ぐが亜久津の舌を防げず侵入を許してしまう。
「ふっ・・・お、れ・・・・おと・・・こ」
ガンバってしゃべろうとするがちゃんとした言葉にはならず、それがまた亜久津をそそらせた。
片方の手で南の両手を押さえもう片方の手を服の中に侵入させた。
「おまえが、思い出すまで続けるから」
「いや!!やめろって!!」
もがいてもがいてもがく。
どれくらい時間がたったんだろう。
面会時間はとっくにすぎているはずだ。
「わりぃ」
亜久津は南と目をあわせようとはしなかった。
「・・・・思い出せないんだよ。こんなことしても」
「あ?てめー今何って言った。何もしねえくせにあきらめるのかょ」
亜久津の一発が顔にくる。
そして、切れた南の唇を舐める。
鉄の匂いがした。
「亜久津・・・・?」
亜久津片方の目から水が出てきた。
「今日は悪かった。もう二度とてめーの所にはこねーよ」
「何・・・・言ってんだよ?」
「だからてめーが俺をわからなきゃ痛いんだよ」
「わからないって誰が誰を?」
きょとんとしている南が亜久津にそう聞いた。
「てめーが俺を・・・・って今何った」
病室を出ようとしていた亜久津が振り返った。
「いや、それはこっちの台詞だから」
「おい、俺は誰だ」
亜久津らしかな台詞に南はぷっと笑った。
「亜久津仁だろ。俺の彼氏の」
にこっとほほえむ。
「心配させんじゃねーよ」
亜久津は再び南に近づいて今度は優しいキスをした。
その時南には亜久津が微かに微笑んでいるようにみえた。
yoshiyuki