「熱と気」
しとしととした雨に憂鬱な気分が重なった。
雨の音と心臓の鼓動が重なりさらに憂鬱へ。
晴れるのであろうか?
それは、心への問いかけ?
天気への問いかけ?
自分でもよく分からなかった。
「眠い・・・・」
南は窓から空を見上げた。
雲がゆっくりと流れる。
さっきまで雨が降っていたとは思えない。
「南!」
大きい声で名前を呼ばれると同時にチョークを投げられた。
白い物体が南にむかって飛んでくる。
チョークは見事南の額に的中。
痛みを押さえ素直に謝る。
「すいません」
クラス中に笑い声が響いた。
「じゃあ、よそ見していた罰としてこの問題を前に出てきてやってもらう」
南は自分にあたって落ちたチョークを拾い上げた。
「何やってんだよー南」
クラス中から声が飛ぶ。
「よし、いいぞ」
書きおわると同時に先生の赤丸がはいる。
ホッと胸を撫でおろすと「次は油断しているな」と言われた。
南は正直余計なお世話だと思った。
なんだか、今日は頭がボーっとした。
(眠い・・・・・)
いつもに増してのやる気のなさ。
一つ一つが面倒になる。
体がだるい。
「南、熱い!!」
気付かない間に千石が背後から抱きついていた。
いつの間にかに、休み時間になっている。
「何言ってんの?」
そして、千石は南の腰に巻き付けた腕を解き、その手を南の額へもっていった。
「南熱があるじゃん!ひーがーしーかーたー!!」
廊下中に千石の声が響き渡った。
「その呼び方はやめろって千石」
「ありゃ?東方後ろにいたの」
東方は南たちの真後ろにいた。
「いたの・・・・って・・・・・・」
東方が悲しい気分になっていると前方から亜久津がやってきた。
「あっくんだー!!」
「南、弁当」
今日の亜久津のお昼は南の特製弁当。
「それどころじゃないよ!!あっくん。南が死んじゃうよー」
死ぬとか言っている割りには目の前で普通に立っている。
「ちょっと熱があるだけだろ」
南は千石の手をどかし、亜久津の弁当をとった。
南は熱のことなんか気にしてない。
「これは40度あるよ!!」
千石が再び南の額に触った。
(40度もあれば倒れてるって・・・)
亜久津は南から弁当を受け取る。
「38度2」
「えっ?」
南は亜久津の声がよく聞き取れなかった。
「行くぞ」
亜久津は南の腕を引っ張る。
それについていくしかなく南は亜久津の後ろを歩く。
ついた所は保健室だった。
保健室につくと、先生から体温計が渡される。
静かな、保健室に体温計の音がなり響いた。
「38度2ね、南君今日はもう家に帰った方がいいわ」
心配して見に来ていた東方と千石が南の鞄を取に行く。
「はい、南、鞄。それにしても、あっくんすごいね!ぴったり38度2じゃん」
「南、行くぞ」
亜久津は自分の単車を持ってくると、後ろに南を乗せた。
「ありがとう」
南はだるい体で腕を亜久津の腰に巻き付けると、軽く目をつぶった。
吹き抜ける風が南の熱い体を冷やしてくれた。
ここは心地が良くて気持ちいい。
亜久津の体温と南の体温が亜久津の背中ごしに交わった。
急に単車が止まる。
「ついた」
そこは、南の家ではなく亜久津の家だった。
「おまえの家どうせ誰もいないだろ」
それは、亜久津なりの気の利かせ方だった。
南はただ「ありがとう」と言うことしかできなかった。
それからはずっと亜久津のベッドで寝ていた。
起きた時には頭がすっきりしていた。
「亜久・・・・津」
南の隣で亜久津は寝ていた。
いつもいっぱいになっている、灰皿は空っぽのまま。
それが、やっぱり亜久津なりの気の利かせ方だった。
「ありがとう」
今度の「ありがとう」は涙と一緒だった。
yoshiyuki